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コーヒー豆をハッキングする

ミューシレージとは何か?コーヒー豆を精製する5つの方法

果物の多くは収穫したらそのまま食べることができます。僕の実家の裏庭には柿の木が植えてあったのですが、小学生の頃にはそれを自分で勝手にとって地元の公園で開かれていたフリーマケットのようなもので売ってお小遣いを稼いでいました。

柿の場合には特に収穫してから食べるまでに加工する必要はありませんが、コーヒー豆の場合にはそうはいきません。コーヒー豆には皮、果肉、ミューシレージなど、いわゆる私たちが実際に見るコーヒー豆の前の段階で取り除かなければならないものがたくさんあります。

今回はミューシレージをはじめとしたコーヒーチェリーを加工する段階でどのような作業を行うのか、そもそもミューシレージとは何なのかなどについて書いていこうと思います。

目次

1). ミューシレージとは何か
2). 水洗式(ウォッシュト)による精製方法
3). 非水洗式(ナチュラル)による精製方法
4). パルプドナチュラル(ハニープロセス)による精製方法
5). スマトラ式による精製方法
6). アナエロビコ(アナエロビック・ファーメンション)による精製方法

ミューシレージとは何か

ミューシレージと言われてもそれが何なのか知っている人は少ないのではないでしょうか。ミューシレージとはひとことで言うと、コーヒーチェリーの果実に入っている粘液のことで、コーヒーの果実の中に入っているパーチメントという部分の外側に付着しています。

ミューシレージは粘液であるので、その名の通りとてもぬるぬるしています。サクランボを食べるとタネのまわりは少しぬるぬるしているものがあると思いますが、それと同じようなものです。

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このコーヒーチェリーの図のMUCILAGEと書かれているのがミューシレージです。このようにコーヒーチェリーには2つのコーヒー生豆(BEAN)が入っており、そのまわりを果肉や皮が包んでいます。

コーヒーが飲めるようになるまでには、収穫されたコーヒーチェリーから種子を包んでいるミューシレージや果肉などの部分を取り除く必要があるのです。

ちなみにコーヒー豆が収穫されるまでの流れをざっくりと説明すると、コーヒーのタネをまいて約2か月で発芽します。発芽したら苗床で約1年育てて、コーヒー農園に植え替えられます。

植え替えられてから2〜3年でコーヒーチェリーを収穫することが可能になり、その後10年間くらいはそのコーヒーノキからコーヒー豆を収穫することができます。そして収穫されたコーヒー豆からミューシレージや果肉などの部分を取り除かれるのです。

参照記事
カスカラコーヒーやカスカララテという豆殻かすを活用した飲み物

その加工の過程で、コーヒー豆の重さは1/5くらいになると言われています。つまり1kgのコーヒー豆を手に入れるためには5kgのコーヒーチェリーを収穫する必要があるのです。

そう考えると収穫されたコーヒーチェリーのほとんどの部分は使われずに捨てられるのですが、最近ではこのコーヒーの果肉や皮といった外側の部分の「カスカラ」と呼ばれる部分を再利用して飲もうというブームがアメリカではあります。

バリスタの大会でカスカラが大きな注目を集めたために日本でも注目されるようになり、カフェなどでカスカラを提供しているお店も増えてきているようです。

水洗式(ウォッシュト)による精製方法

コーヒーチェリーから生豆を取り出すために、ミューシレージ、果肉、皮などの部分を取り除く方法として、水洗式(ウォッシュト)というものがあります。

水洗式(ウォッシュト)の精製方法では、まず収穫したコーヒーチェリーの一番外側に付いている果肉をパルパー(果肉除去機)で除去します。次にミューシレージを取り除くために、発酵槽に入れて酵素の効力でミューシレージを取り除きます。

発酵槽ではなくてミューシレージリムーバ(そのままw)と言われる機械でミューシレージを除去することもあります。その後、ミューシレージが取れたコーヒー生豆をしっかりと水で洗浄します。

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洗浄することによって水気が多くなってしまうので、含水率が11%〜12%になるまで乾燥させます。そして最後に脱穀機でパーチメントを取り除き、コーヒー生豆が完成します。

水洗式(ウォッシュト)の場合には、何段階にも分けてコーヒー生豆を精製するので、より欠点豆の少なくて品質の高いコーヒー生豆を生産することができます。一方で、加工の過程で大量の水が必要になるので、大量の水を確保する必要があり、水質汚染などの問題も付いてまわります。

参照記事
ケニア産コーヒー豆の種類とさっぱりした味の特徴について

非水洗式(ナチュラル)による精製方法

コーヒーチェリーからコーヒー生豆を取り出す2つ目の方法として非水洗式(ナチュラル)という精製方法があります。その名前の通り、水洗式(ウォッシュト)のように水を使わずに精製します。

精製方法はいたってシンプルであり、収穫したコーヒーチェリーをそのまま乾燥させて、乾燥が終わったら脱穀機にかけてコーヒー生豆を取り出すだけです。この方法では大量の水が必要ではないので、安い値段で加工できて環境にも良いです。

しかし、水洗式(ウォッシュト)に比べるとどうしても異物が混入しやすく、欠点豆が多くなりがちです。また乾燥させるためには晴れている必要があるので天候に左右されやすく、乾燥させるために広大な平地も必要になります。




パルプドナチュラル(ハニープロセス)による精製方法

コーヒーチェリーからコーヒー生豆を取り出す方法として、水洗式(ウォッシュト)と非水洗式(ナチュラル)をご紹介しましたが、その間に位置しているのがパルプドナチュラル(ハニープロセス)です。この精製方法は2000年以降にブラジルで発明された新しい加工方法です。

パルプドナチュラル(ハニープロセス)ではウォッシュトの同様に果肉を機械で除去します。しかし、ミューシレージを取り除く作業をせずに、ミューシレージを残したまま乾燥させます。この方法では大量の水を必要としない割に欠点豆の量が比較的に少なくなります。

そのために最近になって人気な精製方法であり、実際に今までは非水洗式(ナチュラル)で加工していたけど、欠点豆を減らしてコーヒー豆の品質を向上させるためにパルプドナチュラル(ハニープロセス)に変更しているコーヒー生産国もあります。

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ちなみにミューシレージは粘液であり、蜂蜜(ハニー)のようにぬるぬるしています。そのためにパルプドナチュラル(ハニープロセス)で乾燥させる際には、水分が蒸発してミューシレージによってコーヒー豆が蜂蜜(ハニー)のようにベタベタします。

ですのでパルプドナチュラル(ハニープロセス)によってつくられたコーヒー豆を「ハニーコーヒー」と一部の人は呼んでいます。ミューシレージの残存率に応じて残存率50%はイエローハニー、残存率100%はレッドハニー、残存率100%かつ糖度が高いものをブラックハニーとも呼びます。

ハニーコーヒーは、コーヒー豆を乾燥させる過程で、ミューシレージの中に含まれている糖分と酸味が凝縮されてコーヒー豆の中に染み込むので独特な味を出すと言われています。

参照記事
コスタリカ産コーヒー豆の特徴-アラビカ種以外は禁止

スマトラ式による精製方法

今まで説明した水洗式や半水洗式とは少し異なる方法で精製されるのがスマトラ式によるコーヒー豆の精製です。スマトラとはインドネシアにあるコーヒー豆の有名な産地の1つであり、スマトラ産コーヒー豆のマンデリンなどは日本でも人気があります。

マンデリンなどはこのスマトラ式という精製方法によって加工されています。スマトラ式の精製方法では、まずコーヒーチェリーを収穫したら、果肉除去機(パルパー)で果肉を取り除きます。そして果肉を取り除いたら乾燥させます。

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ここまではパルプドナチュラル(ハニープロセス)と同じなのですが、スマトラ式ではここで完全に乾燥させずに、半乾きの状態で脱穀をします。そして脱穀し後に再度乾燥させるという方法をとるのです。

もともとインドネシアは雨季が多く乾燥させる期間を他のエリアよりも短縮させる必要があるためにこの方法がとられたのですが、それがスマトラ式の独特な味わいにつながっています。しかしスマトラ式では形がいびつであったり、カビが生えやすかったりと、デメリットもいくつか存在しています。

参照記事
ピーベリーとは何か?!レアな高級コーヒー豆の特徴について

アナエロビコ(アナエロビック・ファーメンション)による精製方法

最後にご紹介するアナエロビコ(アナエロビック・ファーメンション)はかなり特殊なコーヒー豆の精製方法です。これは先ほどご説明したパルプドナチュラル(ハニープロセス)におけるレッドハニー(ミューシレージ残存率100%)を活用します。

レッドハニーはミューシレージの残存率100%なのですが、この100%のミューシレージに更に他のコーヒー豆のミューシレージを浸けて、ミューシレージまみれにするという精製方法です。かなり特殊で、この方法を見つけた人はもはや変態とも言えます(笑)

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他のコーヒー豆のミューシレージに浸けることで嫌気性発酵をさせることができ、複雑なで独特な味わいを実現させることができます。

このようにミューシレージの活用方法やコーヒー豆の精製方法を少し変えるだけでもコーヒーの味に変化をもたらすことができます。現在は今回ご説明した精製方法がメインではありますが、今後は更にコーヒー豆の味に多様性をもたらすために様々な精製方法が発明されていくのではないかと思います。

コーヒーを飲む消費者の好みの変化に合わせて、今回最後にご説明したアナエロビコ(アナエロビック・ファーメンション)のように特殊な加工方法がどんどん生まれていき、コーヒー豆の精製という今まではあまり目のつけられていなかった前段階からコーヒーの品質改善に対する取り組みを行うことは、とても有意義であると個人的には感じています。

参照記事
ゲイシャなどパナマ産コーヒー豆の特徴






 
 

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